解体工事を長くやっていると、工事がうまくいくかどうかは着工前にほぼ決まっていると感じます。重機の腕は確かに必要ですが、それ以上に効くのは届出が揃っているか、近隣に話が通っているか、廃材の搬出先が確保されているかです。当社が解体から処分までを自社で持つようにしてきたのは、この「壊す前」と「壊した後」を自分たちで握りたかったからです。
解体工事とは、何をする仕事なのか
解体工事を「建物を壊す仕事」と言ってしまうと、実態の半分も表せません。工事費の内訳を開いてみると、重機で躯体を壊している時間に対応する費用は全体の3割程度しかありません。残りは、仮設(足場・養生・仮囲い)、分別作業、廃材の積込と運搬、処分費、届出や近隣対応といった諸経費です。
建設リサイクル法により、延床面積80平方メートル以上の建築物を解体する場合は、コンクリート・コンクリートと鉄からなる建設資材・アスファルト・木材を分別して再資源化することが義務づけられています。つまり「まとめて壊して運ぶ」ことは法律上できません。手間をかけて分けながら壊すのが現在の解体工事です。
さらに2023年10月以降、工事規模にかかわらず、解体・改修工事の前にアスベスト含有の有無を資格者が調査し、一定規模以上の工事では結果を都道府県等へ報告することが義務化されました。調査なしで着工することはできません。
対応できる工種
木造建築物の解体
戸建住宅、アパート、木造店舗、木造倉庫が対象です。当社の年間施工件数のうち約290件がこの区分にあたります。
木造の場合、まず屋内に入って畳・建具・断熱材・石膏ボード・設備配管を手作業で撤去します。この内部解体に全工期の3割から4割を使います。手間はかかりますが、ここで分別しておかないと、後工程で混合廃棄物として処分することになり、処分費が倍以上に跳ね上がります。
躯体の解体は、原則として重機のつかみ機で屋根から順に下ろしていきます。隣家との距離が50センチを切るような密集地では、重機が入れる範囲まで手壊しで進め、残った部分を小型機で処理します。川口市や足立区のような住宅密集地での工事は当社の得意とするところです。
鉄骨造(S造)の解体
工場、倉庫、事務所ビル、鉄骨造の店舗が対象です。外壁材(ALC板・折板・サンドイッチパネル)を先に撤去し、鉄骨はガス切断とクレーンによる吊り下ろしを組み合わせて解体します。
鉄骨造は廃材のうち金属が占める比率が高く、鉄スクラップとして有価で売却できるため、総工事費を抑えやすい構造です。ただし、床のデッキプレートとコンクリートが一体になっている部分は分離に手間がかかり、ここを見落とした見積は後から狂います。
鉄筋コンクリート造(RC造)の解体
マンション、商業ビル、プラントの基礎が対象です。大型の油圧ショベルに圧砕機を装着し、上階から順に圧砕していきます。騒音と振動がもっとも大きい工種なので、近隣対策の比重が高くなります。
RC造では廃材の総量が木造の数倍になり、処分費が工事費全体の3割を超えることも珍しくありません。自社で中間処理施設を持っていることの効果がもっとも出るのがこの構造です。
内装解体(原状回復・スケルトン解体)
テナントの退去に伴う原状回復工事、店舗のスケルトン化が対象です。躯体を傷つけずに内装材と設備だけを撤去するため、重機は使えず、ほぼ全工程が手作業になります。
商業施設やオフィスビルでは、搬出経路・エレベーターの使用時間・作業可能な時間帯が管理組合や館の規定で細かく決まっています。この調整が工期の大半を左右します。当社では着工前に館の担当者と搬出計画を詰めてから工程を組みます。
工事の流れ
お問い合わせ
電話またはフォームでご連絡ください。建物の所在地、構造、おおよその規模、希望時期をお聞かせいただければ、現地調査の日程を調整します。
現地調査(無料・原則3営業日以内)
建物の寸法・階数・構造・築年、隣地との距離、前面道路の幅員、重機の搬入経路、残置物の量を確認します。図面があればお預かりしますが、なくても調査できます。所要時間は30分から1時間程度です。
アスベスト事前調査
建築物石綿含有建材調査者の資格を持つ当社社員が、設計図書と現地の目視により石綿含有建材の有無を調査します。判断がつかない建材は分析機関に試料を送り、定性分析を行います。結果は書面でご報告します。
お見積りのご提出
仮設費・解体工事費・分別解体費・運搬費・処分費・諸経費を内訳で明示してご提出します。残置物の処分費やアスベスト除去費は別項目として分けて記載します。現地調査から3〜5営業日でお出しします。
ご契約・各種届出
工事請負契約を締結し、建設リサイクル法の届出(着工7日前まで)、特定粉じん排出等作業届、道路使用許可、必要に応じて特定建設作業実施届を提出します。電気・ガス・水道・電話の停止手続きはお客様にお願いしています。
近隣へのご挨拶・仮設設置
着工1週間前までに、工事内容・期間・作業時間帯・当社の連絡先を記載した書面を持って近隣へご挨拶に伺います。その後、仮囲いと防音シート、必要に応じて足場を設置します。
内部解体・躯体解体
屋内の建具・設備・内装材を手作業で撤去し、品目別に分別します。続いて躯体を解体します。散水を継続して粉じんを抑え、交通量の多い前面道路では誘導員を配置します。
基礎撤去・整地
基礎コンクリートと杭を撤去し、埋戻しと転圧を行います。境界杭の位置を確認し、必要に応じて復元します。次の工事に引き渡せる状態まで整えます。
完了報告・書類のお引き渡し
工事写真、マニフェストの写し、建設リサイクル法に基づく再資源化等完了報告書をお渡しします。建物滅失登記に必要な取壊し証明書もあわせてご用意します。
アスベスト(石綿)への対応
2006年9月以前に着工した建物には、石綿を含む建材が使われている可能性があります。吹付け石綿(レベル1)、石綿含有保温材・断熱材(レベル2)、石綿含有成形板やスレート・Pタイル(レベル3)に分類され、それぞれ必要な養生と届出が異なります。
当社には建築物石綿含有建材調査者が5名在籍しており、事前調査から除去工事までを自社で実施します。調査を外部に委託すると、調査結果が出るまで見積が確定せず、工程が一週間単位でずれていくことがあります。自社で調査できることの実務上の意味はここにあります。
レベル1・2の除去では、作業区画をプラスチックシートで隔離し、集じん・排気装置で負圧を維持した状態で作業します。作業員は電動ファン付き呼吸用保護具と使用後に廃棄する保護衣を着用します。除去した石綿は特別管理産業廃棄物として、二重梱包のうえ許可を持つ最終処分場へ運搬します。
アスベスト調査は「あるかもしれない」で進めない ごく稀に「見た感じ無さそうだから調査は省略してほしい」というご相談をいただきますが、お受けできません。調査と報告は法令上の義務であり、省略すれば施工者も発注者も責任を負います。費用は建物規模により3万円から15万円程度です。
近隣対策として標準で行っていること
解体工事に関するトラブルの大半は、壊し方そのものではなく近隣との関係から生じます。当社では以下を標準工程として見積に含めており、オプション扱いにしていません。
・着工1週間前までの戸別訪問によるご挨拶(隣接両隣・向かい三軒・裏側一軒を基本範囲とし、密集地では拡大します)
・工事内容・期間・作業時間・現場責任者の氏名と携帯番号を記載した書面の配布
・現場入口への工事表示板の設置(苦情の連絡先を明示)
・防音シートによる全面養生(躯体解体中は散水と併用)
・散水の継続(乾燥期は噴霧ノズルを増設)
・作業時間を平日8時から17時に限定(日曜・祝日は原則稼働せず、どうしても必要な場合は事前に近隣へ説明)
・前面道路の幅員が狭い場合、または通学路にかかる場合の誘導員配置
・毎日の作業終了時の道路清掃とタイヤ洗浄
2026年3月期に当社が施工した480件のうち、近隣からお申し出をいただいた件数は11件でした。内容は振動と車両の停車位置に関するものが中心です。いずれも当日中に現場で対応し、工事中断に至った案件はありません。苦情をゼロにするとは申し上げませんが、起きたときにすぐ動ける体制を用意しています。
費用の考え方と坪単価の目安
解体工事の見積は、次の積み上げで構成されます。
① 仮設工事費(仮囲い・防音シート・足場・養生)
② 解体工事費(重機・手壊しの人工と機械経費)
③ 分別解体・積込費
④ 運搬費(車両台数×距離)
⑤ 処分費(品目別の受入単価×重量)
⑥ 付帯工事費(外構・樹木・井戸・浄化槽・ブロック塀など)
⑦ 諸経費(届出・近隣対応・誘導員・保険)
このうち変動が大きいのは⑤の処分費と⑥の付帯工事費です。処分費は廃材の重量で決まるため、同じ延床面積でも土壁や瓦屋根の有無で大きく動きます。付帯工事は現地を見ないと量が読めません。
目安としての坪単価は次のとおりです。ただし、前面道路の幅員が4メートル未満で重機が入らない場合、隣地が極端に近い場合、残置物が多い場合は上振れします。
| 木造 | 3.0万円〜4.5万円/坪 |
|---|---|
| 鉄骨造(S造) | 4.5万円〜6.5万円/坪 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 5.5万円〜8.0万円/坪 |
| 内装解体(原状回復) | 2.0万円〜5.0万円/坪(設備の量と搬出条件により変動) |
| アスベスト除去 | レベル3:3,000円〜8,000円/㎡ レベル1・2:15,000円〜60,000円/㎡ |
| 残置物処分 | 2万円〜/立方メートル(品目により変動) |
「追加費用が後から出るのが不安」というお声をよくいただきます。当社では、地中埋設物(旧基礎・浄化槽・ガラ)のように掘らなければ分からないものについて、見積段階で「出た場合の単価」を明記しています。出なければ請求しません。何が確定費用で、何が条件付きなのかを見積書の上で分けておくのが、追加請求をめぐるトラブルを避ける一番確実な方法だと考えています。
工期の目安
| 木造30坪(戸建住宅) | 7〜12日(届出期間を除く) |
|---|---|
| 木造アパート(2階建・8戸) | 14〜21日 |
| 鉄骨造200坪(倉庫) | 21〜35日 |
| RC造500坪(4階建ビル) | 50〜80日 |
| 内装解体100坪(店舗) | 5〜10日 |
上記に加えて、建設リサイクル法の届出から着工までに最低7日、アスベストの分析が必要な場合はさらに5〜10日が必要です。「来週から着工してほしい」というご依頼には、法令上お応えできない場合があることをご承知ください。逆に、解体後の新築工程が決まっている場合は、そこから逆算して着工日を設定します。
自社一貫体制であることの意味
解体業者の多くは、廃材の運搬と処分を他社に委託しています。それ自体が悪いわけではありませんが、二つの弱点があります。
一つは工程です。処分場の受入枠が埋まっていれば搬出できず、現場に廃材が残ったまま重機が止まります。工期が決まっている下請工事では、これが一番避けたい事態です。
もう一つは費用です。運搬と処分を外注すれば、そこにマージンが乗ります。廃材量が多いRC造や、処分費の比率が高い土壁の木造家屋では、この差が総額の1割近くに達することがあります。
当社は自社の車両で自社の施設に運び、自社で分別・破砕して再資源化します。受入枠は自社の工程に合わせて調整できますし、処分費も自社の原価です。1991年に収集運搬の許可を取り、1998年に中間処理施設を持ったのは、この二つの弱点を自分たちで埋めるためでした。
解体のご相談、見積の取り直し、他社見積のセカンドオピニオンも承ります。現地調査とお見積りは無料です。
